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第2回強皮症研究会議プログラム

日時:平成11年2月27日(土) 12:50〜19:10

I. オープニング・リマーク(10分)

12:50〜13:00
竹原和彦(金沢大学皮膚科)

II. International Conference on SScレポート(10分)

竹原和彦(金沢大学皮膚科)13:00〜13:10
座長:近藤啓文(北里大学内科)

III. ACRレポート・スキンスコアパンフレット概説(20分)

桑名正隆(慶応義塾大学先端医科学)13:10〜13:30
座長:竹原和彦(金沢大学皮膚科)

IV. 基礎研究(口演7分、討論8分)

13:30〜15:45
座長:桑名正隆(慶応義塾大学先端医科学)(13:30〜14:45)
瞰持 淳(千葉大学皮膚科)

1. Oncostatin Mによるヒトα2(I) collagen遺伝子転写制御についての検討

尹 浩信、玉置邦彦 (東京大学皮膚科)、Maria Trojanowska (Medical University of South Carolina)

Oncostatin M (OSM)はコラーゲン合成を促進し、線維化に関与することが知られている。正常ヒト皮膚線維芽細胞を用いてOSMによるヒトα2(I)collagen遺伝子の転写制御について検討した。OSMは転写レベルで同遺伝子を制御することが示され、さらにCAT assay、gel shift法、in vivo footprinting法にて同遺伝子プロモーター領域の-125bp付近に存在する転写因子Sp1/Sp3結合領域を介して制御していることが明らかとなった。

2. 全身性強皮症患者における I 型コラーゲン遺伝子の転写制御配列の特異性

畑隆一郎、赤井 潤、木村彰方(東京医科歯鉛F餬癸成人疾患)、石川 治(群馬大学グ絣愽凜皮膚科)、桑名正隆(慶應大学グ絣愽凜先端医科学撃・挧・霾・、新海 浤(千葉大学グ絣愽凜皮膚科)

我々はすでに I 型コラーゲンを構成するCOL1A2鎖遺伝子の転写制御配列に2つのマイクロサテライトの存在を見出し、これらのマイクロサテライトがCOL1A2鎖遺伝子の転写を活性化することを報告した。今回、強皮症患者のゲノムのマイクロサテライトの解析から、男性患者ではこれらのマイクロサテライトの組合せの分布が正常と異なり、転写促進活性の高い組合せが多いことを見出した。

3. 強皮症線維芽細胞のIL-1α転写亢進に関与する核内因子の検討

川口鎮司、深澤千賀子、高木香恵、杉浦智子、針谷正祥、原まさ子、鎌谷直之(東京女子医科大学・膠原病リウマチ痛風センター)

強皮症の線維芽細胞が構成的にIL-1αを発現しており、IL-1αの作用が、強皮症線維芽細胞の異常に重要な役割を果たしていることを報告してきた。今回、その転写に関与する核内因子の同定を試みた。IL-1αの転写調節部位および線維芽細胞より得たcDNA libraryを用いyeast one-hybrid法を用いてスクリーニングを行った。得られたクローンの塩基配列よりホモロジー検索を行い、強皮症に特異的に発現している核内因子の同定を行った。

4. 強皮症(SSc)病変におけるプロスタノイド受容体の発現とその役割

栗原夕子1、遠藤平仁1、橋本明彦2、勝岡憲生2、近藤啓文1(北里大学膠原病内科1、皮膚科2)

強皮症(SSc)の皮膚病変におけるプロスタノイド受容体サブタイプの発現とその役割について検討した。SSc患者及び鰍◎患者皮膚におけるEP4mRNAの発現をIn situ hybridization、免疫染色で測定した。EP4はSSc患者皮膚表皮細胞に発現を認めたが、鰍◎患者皮膚組織では発現を認めなかった。培養繊維芽細胞、血管内皮細胞、表皮角化細胞におけるPGE受容体の発現をRT-PCRで測定し、さらにEPサブタイプ選択的アゴニストの作用を検討した。各々の細胞で異なるEPサブタイプの発現を認め、EPサブタイプの役割も異なっていると考えられた。

5. マウス線維化モデルとCTGF

森 俊典、永岡徹也、信崎幹夫、佐藤伸一、竹原和彦(金沢大学皮膚科)

新生児マウスにTGF-βを連日皮下注すると,3日後に肉芽組織が誘導されるが,7日後には消失する。しかしTGF-βに引き続いてCTGFを投与すると,7日後に線維組織が形成され,10日後まで維持される。CTGFを単独で投与しても,またCTGFに引き続いてTGF-βを投与しても線維化は生じない。この結果から線維組織の形成にはTGF-βによる誘導とCTGFによる維持が必要であることが示唆された。

座長:三崎義堅(東京大学アレルギーリウマチ内科)(14:45〜15:45)
川口鎮司(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)

6. 強皮症におけるInterleukin-17の役割

倉沢和宏、廣瀬晃一、佐野英樹、高林克日己、岩本逸夫、齋藤 康(千葉大学医学部第二内科)

強皮症におけるT細胞由来のサイトカインIL-17の発現およびその線維芽細胞、血管内皮細胞に対する効果を検討した。強皮症患者の末梢単核球は健常人と異なり、未刺激状態でIL-17を産生した。さらに強皮症患者の皮膚、肺においてIL-17産生が検出された。また、IL-17は繊維芽細胞を増殖させ、血管内皮細胞のアポトーシスを阻害し、炎症性サイトカインの産生を誘導した。したがって、IL-17は強皮症の病態形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。

7. 強皮症に出現する抗IL-6自己抗体の機能

竹村博之、湯原孝典、赤間高雄、山根一秀、住田孝之(筑波大学臨床医学系内科)

強皮症患者血清中に多く見い出される抗IL-6自己抗体は、非中和抗体であり、血中にてIL-6を結合しその活性を保持している。本抗体陽性血清をゲルろ過すると、主なIL-6活性はIgG付近に出現する。また、抗体陽性血清のIL-6活性は、抗体陰性血清よりも有意に高い。これらのことより、本抗体は、生体内にてIL-6の担体として機能していると思われる。抗IL-6自己抗体は、IL-6活性を保持し、強皮症の病態に影響を与えている可能性がある。

8. 強皮症患者における末梢血AV24/BV11+ T細胞の選択的減少

香城 諭、住田孝之(筑波大学臨床医学系内科)

NK T細胞は,均一なTCR AV24AJ18およびBV11を発現している.本研究では,FACSを用いて,強皮症患者末梢血におけるTCR AV24/BV11+ T細胞の動態を確認することを目的とした.解析の結果,CD4-CD8-T細胞分画中のAV24/BV11+ T細胞の割合が健常人(1.15±1.12%,n=13)に比し強皮症(0.25±0.16%,n=8)と有意な低下を示していた.よってAV24/BV11+T細胞は,強皮症における調節性T細胞である可能性が示唆された.

9. 全身性硬化症女性におけるマイクロキメリズム解析

村田秀行、住田孝之(筑波大学臨床医学系内科)

近年母胎循環中に残存する胎児性幹細胞のGVHD様反応が全身性硬化症(SSc)の病因に関わることが示唆されている。そこでSSc男児出産女性の末梢血DNAのY染色体配列を男児出産健常人女性を対照としてPCR法により解析した。SSc女性では13例中8例(61.5%)に、健常人女性では12例中6例(50%)に検出され両者に有意な差はなく、Y染色体配列はSSc女性に特異的ではないことが示された。

V. 臨床研究(口演7分、討論8分)

16:00〜17:45
座長:住田孝之(筑波大学臨床医学系内科)(16:00〜17:00)
相馬良直(東京大学分院皮膚科)

10. 群馬大学皮膚科強皮症患者(SSc)における抗Scl70抗体および抗セントロメア抗体(ACA)と臨床所見の関連

秋元幸子、安部正敏、石川 治(群馬大学皮膚科)

1989年から1998年に当科を受診したSSc134例の臨床所見と抗Scl70抗体およびACAとの関連を検討した。抗Scl70抗体陽性SSc(n=31)は41.9%がlimited cutaneous SSc(lSSc)で,指先″痕のある例,肺線維症罹患例,関連死例が多かった。ACA陽性SSc(n=35)は1例を除いた全例がlSScで,指先″痕のある例,肺線維症罹患例は少なく,関連死例はなかった。またシェーグレン症候群,原発性胆汁性肝硬変合併率が高かった。

11. 全身性強皮症患者手指におけるニトログリセリン製剤含有テープの効果

関 姿恵、秋元幸子、石川 治、安部正敏、嶋岡正利、岡田克之(群馬大学皮膚科)、宮地良樹(京都大学皮膚科)

全身性強皮症(SSc)患者25名の一側手関節部にニトログリセリン製剤含有テープ(NTGテープ)を貼布し,経時的な手指温変化をサーモグラフィーを用いて観察した.NTGテープ貼布は病型あるいは罹患年数に関わらず,貼布前の手指温低下例に温度上昇効果があった(p< 0.05).またSSc患者に冬季NTGテープ貼布治療を施行したところ,12例中10例の自覚症状が改善し,9例中4例の指尖凋∞が軽快した.

12. 強皮症におけるHLAクラスII遺伝子の解析

桑名正隆(慶應義塾大学先端医科学)

強皮症患者のHLAクラスII対立遺伝子を同定し、強皮症の発症および自己抗体産生におけるHLAクラスII遺伝子の役割を検討した。強皮症と健常人でHLA頻度に差はなかったが、抗トポイソメラーゼI、抗U1RNP、抗セントロメア抗体はそれぞれ異なるHLAクラスIIハプロタイプと関連した。したがって、強皮症は自己抗体-臨床症状-HLAクラスIIで規定される病型で構成された不均質な疾患と考えられた。

13. トポイソメラーゼI(トポI)に対する免疫応答の経時的検討

桑名正隆1)、三森経世2)、鏑木淳一3)(1)慶應義塾大学先端医科学、2)同内科、3)東京電力病院内科)

抗トポI抗体陽性強皮症21例の抗トポI抗体価と臨床症状を10年以上経時的に調べた。経過中に抗トポI抗体が消失した6例は全例がlimited型で、肺機能は低下せず死亡例もなかった。抗体陽性例ではトポIに対する末梢血T細胞増殖反応のkineticが活性化T細胞と同様であるのに対し、消失例ではmemory T細胞のkineticを示した。したがって、トポIによる抗原刺激が強皮症の病態と密接に関連することが示唆された。

座長:竹原和彦(金沢大学皮膚科)(17:00〜17:45)
近藤啓文(北里大学内科)

14. 超音波ドップラー法による全身性強皮症患者の腎病変の評価

佐藤伸一、西島千博、竹原和彦(金沢大皮膚科)、平田昭夫(同泌尿器科)

全身性強皮症(SSc)患者の腎血管抵抗を超音波ドップラー法で測定した。SSc患者では,症状を認めなくとも,健常人,SLE患者に比して腎の血管抵抗が有意に高値を示した。肺線維症・びまん性色素沈着等のみられる群および血清中の免疫グロブリン値高値群では血管抵抗の有意な上昇が認められた。本方法は非侵襲的であり,SScの腎病変の早期発見に有効な検査法である可能性が示唆された。

15. 全身性強皮症における血清中connective tissue growth factor(CTGF)濃度

永岡徹也、佐藤伸一、長谷川稔、竹原和彦(金沢大皮膚科)、玉谷卓也(JT、医薬探索研)

【目的と方法】全身性強皮症(SSc)60例、全身性エリテマトーデス(SLE)30例、皮膚筋炎/多発性筋炎(PM/DM)20例、健常人30例の血清中CTGF濃度をELISA法にて測定し、臨床的、血清学的特徴との相関について検討した。【結果】SScのCTGF濃度はSLE、PM/DM、健常人よりも有意に高値であり、皮膚硬化の範囲、肺線維症の重症度と相関していた。【結論】CTGFがSScの病態形成に関与していることが示唆された。

16. 膠原病患者血清中のVEGF濃度の検討

菊池かな子、久保正英、尹 浩信、玉置邦彦(東大皮膚科)

Vascular endothelial growth factor(VEGF)は特に内皮細胞に特異的に作用するサイトカインであり、その血管新生作用が重要である。各守П原病患者117例の血清中のVEGF濃度を正常人20例を対照として測定し、臨床症状との関連を調べた。RAとPM/DMで有意な血中VEGF濃度の上昇が認められた。また、SScではdSScのみ有意に高い血中VEGF濃度が観察された。SScでは、血中VEGF濃度と%VCの間に負の相関が見られた。

VI. 症例(口演5分、討論5分)

18:00〜19:00
座長:藤咲 淳(斗南病院リウマチ膠原病科)
石川 治(群馬大学皮膚科)

17. 急速に進行し、微小血管障害型溶血性貧血を呈した強皮症の一剖検例

向井正也、能登谷 京、坊垣暁之、河野通史、深沢雄一郎*(市立札幌病院免疫血液内科、同病理部*)

症例、57歳、男。平成9年2月に四肢の浮腫で当院を初診。糖尿病もあり入院し、RAとして経過観察。同年5月に顔面の皮膚硬化と手関節の可動域制限にて当科入院。強皮症の間質性肺炎でステロイド治療を開始。破砕赤血球、血小板減少、腎機能障害、軽度の精神症状があり、微小血管障害型溶血性貧血、特にTTPと診断。血漿交換・透析の追加にも腎機能障害、呼吸不全には効果なく死亡。剖検はTTPに相当する病理診断であった。

18. 自己免疫性胆管炎(AIC)を合併したmorpheaの一例

麻生たづ、藤咲 淳(斗南病院リウマチ膠原病科)、大井雅夫(同消化器科)、森川玲子(同皮膚科)、高橋達郎(同臨床病理科)

Morpheaと診断されていた45歳女性が、胆道系酵素上昇を伴う肝機能障害を指摘され,受診した。AMA陰性、IgM 216mg/dl, IgG 2,107mg/dlであったが、肝生検ではPBCと類似の肝組織変化が認められた。さらに筋原性酵素の上昇もあり、プレドニゾロン30mg/日を開始したところ、肝機能異常、筋酵素上昇は速やかに正常化した。morpheaに合併したAICと考えられる症例を経験したので報告する。

19. 難治性漕・凋∞によりabove-knee amputationに至った強皮症の1例

古田淳一、湯原孝典、竹村博之、赤間高雄、山根一秀、住田孝之(筑波大学膠原病・リウマチ・アレルギー内科)

82才女性。1972年レイノー現象出現、さらに顔面・前胸部の毛細血管拡張、四肢末梢の皮膚硬化、下部食道拡張、抗セントロメア抗体陽性が出現し1982年強皮症と診断。1998年春より漕・凋∞が生じ、難治なため同年11月入院し滑・を切断したが創は癒合せず。動脈造影では両側で膝より遠位の多発性狭窄・閉塞を認め、above-knee amputationを行った。限局型強皮症で高度の中枢動脈閉塞がみられたことは興味深いと考え報告する。

20. 著明な肺高血圧を呈した抗セントロメア抗体陽性の全身性強皮症の1例

大橋陽子、倉持 朗、清原祥夫、鈴木 正、土田哲也(埼玉医大皮膚科)

58歳,女性。1972年頃よりRaynaud症候出現。1977年4月当科初診。皮膚生検等にて全身性強皮症と診断。1984年12月頃より咽頭痛,嚥下困難出現。抗セントロメア抗体陽性。1995年1月全身の浮腫を認め,利尿剤の内服開始。内視鏡にて逆流性食道炎の診断。同年12月胸部X線上心肥大,肺血管陰影の増強。心echo上肺高血圧による右心不全と診断。1996年12月酸素療法開始。1998年7月心不全の急性増悪のため死去。

21. 比較的早期に診断し治療が奏効した高血圧性強皮症腎クリーゼ(SRC)の一例

桶谷美香子、大久保忠信、井畑 淳、出口治子、中村満行、大野 滋、上田敦久、白井 輝、*佐々木哲夫、石ケ坪良明(横浜市立大学医学部第一内科,*同皮膚科)

53歳女性。H9年8月両手指の硬直を自覚。H10年2月症状増悪し皮膚生検で強皮症と診断。7月に176/100mmHgと高血圧を認め,エナラプリル2.5mg投与したが中断。Crの上昇,貧血を認め緊急入院となった。眼底所見,尿所見,レニン高値,溶血性貧血,ANCA陰性より高血圧性SRCと診断し,ACE阻害剤,Ca拮抗薬,A-・拮抗薬,プロスタグランディン製剤の投与を行った。腎機能は軽快したが,微小血管性溶血性貧血で輸血を余儀なくされている。

22. 硫酸ペプロマイシン使用後に発症した非定型強皮症の1例

浅野善英、鹿田純一郎、門野岳史、菊池かな子、玉置邦彦(東大皮膚科)、川端康浩,相馬良直(東大分院皮膚科)

72歳男。下口唇の有棘細胞癌に対し,守澂靹除術及び硫酸ペプロマイシン(総量75mg,筋注)による化学療法を施行。8カ月後,体幹,四肢に皮膚硬化,背部u凵【を伴う線状色素沈着が出現。強指症,Raynaud現象はなく,抗核抗体陰性。食桃・動運動の軽度低下。臨床経過,組織像にて,硫酸ペプロマイシンによる強皮症と診断。過去にブレオマイシン誘発性強皮症の報告は散見されるが,本剤によるものは初めてである。

VII. クロージング・リマーク(10分)

19:00〜19:10
近藤啓文(北里大学内科)